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東北見聞録 4 歩く・会う・語る・住む
黒田四郎 著
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立ち読みコーナー
まえがき
 

 私が東京から仙台に移り住んで二五年余になります。その間東北の地域を見聞するにつけ、素晴らしい歴史、文化、風土がたくさん埋もれていることに気付きました。そこでこれらを調べて多くの人々にPRし、併せて東北の皆様にも知って戴こうと思い、随筆を書き続け、出来たのが『東北見聞録』で一九九七年でした。以来第二冊、第三冊を出版し、本書は第四冊目であります。
 私は第一冊目を出版した時、続編を書くことを全然考えていなかったので、『東北見聞録』としましたが、その第一冊目において私が一番言いたかった事は、司馬遼太郎とドナルド・キーンとの対談『日本人と日本文化』(中公文庫)で引用されている市原豊太教授(旧制一高)の随筆の中にあります。それによれば昭和一八年の秋、元駐日フランス大使ポール・クローデルが、フランスの詩人ポール・ヴァレリーに「私がその滅亡するのをどうしても欲しない一つの民族がある。それは日本人だ。これほど興味ある太古からの文明を持っている民族を私は知らない。最近の日本の大発展も私には少しも不思議ではない。彼らは貧乏だが、しかし彼らは高貴だ」と述べていることです。
 この高貴とは、私には日本古来から伝わった心、例えば名を惜しむ心、思いやりの心、足るを知る心、もったいないと思う心など、心の豊かさではないかと思われます。
 第二冊目及び第三冊目で述べた所でありますが、第四冊目の本書においても、私が特に述べたいことは、二一世紀は人類が人類の危機をひしひしと感じる世紀であり、その危機とは、地球環境の悪化と精神の荒廃ではないでしょうか。このように考えますと、人類は二一世紀においては、地球環境の悪化と精神の荒廃を防がなければなりませんが、これらを救うものは日本において古来から伝わった心の豊かさ、すなわち心の高貴であり、別の言葉で言えば、自然を畏敬し、平和を愛した縄文人の心ではないでしょうか。
 本書の構成は五部からなり、第一部は、地域に息づく東北の心で、新潟県を含む東北七県から都市を選び、そこに息づく歴史、文化、風土を紹介しました。第二部の東北の夏祭りでは、東北の四大夏祭りを中心に述べました。第三部の東北の歴史を刻んだ賢人達では、東北出身者に限定しないで、東北から世界を舞台に活躍した賢人にもふれました。第四部の世界と結び合う東北では、諸外国と東北の交流について、仙台における活動も含めて述べました。第五部の徒然なるままにでは、吉田兼好法師の徒然草のつれづれを連想したのはもちろんでありますが、仙台の方言徒然(とぜん)(淋しいの意)を思い浮かべ、この言葉がおもしろいので使ってみました。ここでは調べていておもしろいと思った事柄について筆の赴くままに書きました。
 本文の大半は、東北経済産業局刊『東北21』(月刊)に寄稿したものでありますが、一部筆を加えました。又会長、社長等の会社の役職は、その当時のものとさせて戴きました。

   私が仙台に来てから終始、東北電力株式会社に、そして後半は社団法人東北経済連合会、財団法人東北産業活性化センター等にお世話になり、いまは株式会社エルクにお世話になっています。この間東北のことを勉強し、東北のために仕事をする機会を与えられましたことを非常に感謝しています。そしていまは亡くなられましたが私を招いて下さった若林彊東北電力元社長、東北の一体化を強調された玉川敏雄東北電力元社長、そして日本はもちろんのこと世界への情報発信に率先垂範され、前三著の「刊行によせて」のお言葉を戴いた明間輝行東北経済連合会元会長に対し、深く感謝の意を表したいと思います。また折に触れて温かい励ましのお言葉をちょうだいし、今回「刊行によせて」の玉稿を戴きました八島俊章東北電力元社長、私の本を温かく見守り、サジェストも戴きました幕田圭一東北経済連合会会長、さらには『東北21』の私のエッセイを読み、励ましのお言葉を戴きました高橋宏明東北電力社長に対し、あつく感謝の意を表しまして、まえがきを結びたいと思います。