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東北見聞録 2 歩く・会う・語る・住む
黒田四郎 著
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立ち読みコーナー
まえがき
 
 私はさきに『東北見聞録−歩く・会う・語る・住む−』を出版した。一九九七年四月のことであった。それ以来仕事の合間を利用して執筆活動を続け、このほどようやく二冊目である本書の出版の運びとなった。

 題名については、前回に続き『東北見聞録』とした。問題は前の『東北見聞録』との関係をどうするかであった。というのは、前回の時には二冊目を出すことは全然考えておらず、完結の形をとったが、今回のように続編的なものを書いてみると、第二巻としたくなった。しかしよく考えてみると、前回が第一巻となっていないのに、今回第二巻とするのはおかしいので、今回は軽く『東北見聞録 2』ということにした。

 本書の構成は、五つの章から成る。第一章は「人をはぐくむ風土」で、新潟県を含む東北七県からいくつかの市町村をとりあげて、その歴史、文化、風土を紹介した。第二章「東北の歴史を辿る」では、東北出身者および東北にゆかりのある歴史上の人物について東北との関係を述べた。第三章「東北、こころの文化」では、縄文をはじめとして、東北には心の文化が残されているが、その心は父祖の築いたものを受け継ぎさらに守り育てる心であり、それらを「広瀬川」「けやき並木」「雁とともに生きる」などにおいて、自然環境の保護などを例にとり述べた。第四章「徒然の記」では、吉田兼好法師の「徒然草」の「つれづれ」を連想したのはもちろんであるが、仙台の方言の「徒然(とぜん)(「退屈」の意味もあるがむしろ「淋しい」の意)をも思い浮かべた。私は淋しくはないが、この言葉がおもしろいので、両者の掛け言葉を意図してこれを使ってみた。私は仙台に来てからもう二十年になり、私の考え方は仙台あるいは東北の考え方になっている。その私が思い出すままに書いたのが「徒然の記」である。

 最後は「二十一世紀に向かって」である。いよいよ二十一世紀であるが、束北でも東北経済連合会の訪欧ミッションに代表されるように、二十一世紀への数多くの羽ばたきがある。それをまとめて世に問うたものである。

 前著『東北見聞録』で私が一番言いたかったことは、昭和十八年の秋、元駐日フランス大使のポール・クローデルがフランスの詩人ポール・ヴァレリーに「日本人は太古から優れた文化をもっている。今は貧しいが志は気高い」と述べたことである。この「志は気高い」とはどういうことかと考えてみた場合、それは日本古来から伝わった心の豊かさ、例えば恥を知る心、思いやりの心、感謝する心、勿体ないと思う心、嘘をつかない心、などのことではないかと思っている。そしてその続編である本書において私が強調したいことは、本文中の数か所で触れているごとく、二十一世紀は人類が人類の危機をひしひしと感ずる世紀であり、その危機とは地球環境の悪化と精神の荒廃であり、両者は底辺において連なっており、その地球環境悪化の源は精神の荒廃であるということである。したがってすべての人が二十一世紀においては地球環境の悪化と精神の荒廃を防がなければならないが、これらを救うものは日本において古来から伝わった心の豊かさであり、これは具体的には家庭の躾、学校の教育、および社会の協力によって達成されるものである。そしてこの心の豊かさをさらに遡れば、自然を畏敬し平和を愛する縄文の心ではないかと、私は思っている。

 本書の随筆の大半は、東北通商産業局月刊誌『通産情報』に寄稿したものであり、一部は秋田県のヒューマン・クラブの雑誌『原点』その他に掲載されたものであるが、当初書き始めてから四年近くも経過しているので、大部分について筆を加えた。

 私が仙台に来てからもう二十年になる。その間終始東北電力に、そして後半は社団法人東北経済連合会、財団法人東北産業活性化センター、株式会社電力ライフ・クリエイト等にお世話になった。この間東北のことを勉強し、考え、東北のために仕事をする機会を与えられたことを非常に感謝している。そして今は亡くなられたが私を招いてくださった若林彊・東北電力元社長、また、東北の一体化を強調された玉川敏雄・東北経済連合会前会長に深く感謝の意を表したい。そして特に、日本はもちろんのこと世界への情報発信に率先垂範され、本書の出版にあたり前著に続いて今回も「刊行によせて」のお言葉をいただいた東北経済連合会・明間輝行会長、さらには折に触れて励ましのお言葉を頂戴している八島俊章・東北電力社長に対して、厚く感謝の意を表して、まえがきを結びたい。