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聞き書「福島の食事」

日本の食生活全集 7
柏村サタ子 他編

聞き書「福島の食事」
伝統と進取の気性が産みだす東国のまほろば「福島の食」。会津、中通り、浜通り、三つの食文化。豊富な食素材を伝統の生活知が生かす酒ともちと魚の食
●3,038円(税込)
●A5判、384頁
●87年12月
●農文協
在庫あり:1〜3営業日でお届けします
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内容

会津盆地は磐梯山、飯豊連山の天険にいだかれ、熟れ食を育ててきた。会津の酒はその粋である。阿武隈川はにしん、棒だらを運び、会津の熟れ食を支える。山間はうさぎ、熊、山鳥が住み、はや、あゆが渓流を走る。つゆもち、あんもち、ひきなもちは、福島北部盆地の晴れのもち。石城の海は遠洋漁業の基地で、船がもどれば食べきれないほどの魚のみやげが、浜ならではの魚料理の数々を生んだ。


目次

■「会津盆地の食」=もの日にはもちを搗き、秋には身不知柿をかじる

一、四季の食生活
◎冬…雪の中で囲ったものを食べて暮らす
 麦飯と打ち豆入りの味噌汁(日常の食生活)/長い冬ごもりはごちそうで(晴れ食、行事食)
◎春…雪解けに、待ちこがれたくきたちの緑
 白い野菜から青い野菜に(日常の食生活)/彼岸のまんじゅうのてんぷら、五月節句のつの巻き(晴れ食、行事食)
◎夏…作物の手入れに精出して働く
 しゅんの野菜のくじら汁(日常の食生活)/お盆のごちそうを食べる(晴れ食、行事食)
◎秋…彼岸も終わり、さあこれからとり入れ
 間引き菜のおひたしや豆豆腐(日常の食生活)/節句にはもちでも搗いて(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、もち、だんご
◎米
 ごはんのいろいろ(小豆飯、ひし巻きなど)、もちのいろいろ(じゅうねんもちなど)、だんご(焼きもち、つの巻き)
◎大麦、小麦〈利用のしくみ〉
 麦飯、こうせん粉、すいとん
◎そば〈利用のしくみ〉
 手打ちそば
◎豆類
 つと納豆、納豆ひしょ、豆数の子など

三、季節素材の利用法
◎野菜〈利用のしくみ〉
 干し菜と身欠きにしんの煮もの、ざく煮など
◎野草、山菜、きのこ〈利用のしくみ〉
 ふき炒り、あかんぼとなすの油炒め
◎海産物と淡水の魚貝
 海の魚の利用(塩びきあらの粕汁など)、海草の利用、どじょうとつぶの利用
◎鶏、卵、いなご
◎果物、おやつ
 水あめ、焼きとうみぎ

四、伝承される味覚
◎味噌、醤油、三五八
◎漬物類
 切り漬、丸漬、高田梅の梅漬など
◎油、調味料、香辛料、薬味
◎木の実、種実
◎酒類
 どぶろく、甘酒

五、会津盆地の食、自然、農業

■「会津山間(只見)の食」=あり余る山菜と山のけもの、川の魚を食卓に

一、四季の食生活
◎冬…六尺以上も積もる雪の中で
 大根葉入りかて飯、貯蔵野菜(日常の食生活)/もちと川魚のすし漬で正月(晴れ食、行事食)
◎春…雪消しに灰や土をまいて農作業の準備
 雪が消え、野山の山菜を摘む(日常の食生活)/焼きもちをつくりくつろぐ(晴れ食、行事食)
◎夏…薄暗いうちから農作業
 刈野でとれるじゃがいも、あわとうみぎが米の補い(日常の食生活)/お盆には先祖にてんぷら、ささぎのごまあえなどをあげて骨休め(晴れ食、行事食)
◎秋…木の実やきのこを貯え、大根を干す
 かて飯に味のしみこむ大根煮(日常の食生活)/もちを搗いて収穫を喜ぶ(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、もち、だんご
◎米
 利用のしくみ、ごはんもの(まいたけ飯など)、もちのいろいろ(雑煮もちなど)、米粉でつくるもの(焼きもち、だんご汁)
◎そば
◎あわ
 あわ飯、あわもち
◎とうみぎ
 焼きとうみぎ、とうみぎこうせん
◎豆類
 豆腐の料理、納豆
◎いも類、かぼちゃ
 いも味噌

三、季節素材の利用法
◎野菜、山菜、きのこ
 野菜利用のしくみ(大根煮、ざく煮)、山菜、野草利用のしくみ(こごみのおよごし、しおでの醤油汁、うるいの味噌汁など)、きのこ利用のしくみ
◎魚、くじら、海草類
 焼き干しはやの醤油煮、いわなの塩焼き
◎山の動物、まむし
 うさぎ汁、肉汁、山鳥のしたじ

四、伝承される味覚
◎味噌
◎漬物
 味噌漬、にしん漬
◎飲みもの
 どぶろく

五、会津山間(只見)の食、自然、農業

■「会津山間(南郷)の食」=雪深い冬の暮らしをうるおす熟れ食の数々

一、南郷の四季の暮らしと食事
◎冬…四尺も積もる雪の中で
◎春…雪が解けると野草、山菜の季節
◎夏…くじら汁や川魚で元気をつける
◎秋…秋じまいを急ぎ、冬じたくに手間を
◎南郷の自然と、とれる食べもの、買う食べもの

二、南郷の風土が生んだ食べもの
 おっかけまんま、はや・あゆのすし漬など

■文化としての会津の酒

一、三拍子そろった酒造りの地
二、自然の神秘を知る酒造りの世界
三、集う者の心をまろやかにする会津の酒
四、行事、講、無尽
五、親族の悲しみをいやす仏事の酒

■「福島北部盆地の食」=蚕が眠っている間にもちを搗いて食べる

一、四季の食生活
◎冬…庭はきがすむと、機織りにかかる
 豊富な貯蔵野菜を生かす(日常の食生活)/えびす講に尾頭づき、蚕祝いのまゆかきだんご(晴れ食、行事食)
◎春…桑の木の手入れと田植えに張り切る
 凍みもちに砂糖醤油の小昼(日常の食生活)/桑休みにあんこもちを搗く(晴れ食、行事食)
◎夏…蚕が繭をつくるとほっと一息
 あかいもやかぼちゃの煮もの(日常の食生活)/お盆にはうどんやそうめん(晴れ食、行事食)
◎秋…繭が売れ、米俵を積むよい季節
 いも類、大根の味が増す(日常の食生活)/彼岸にぼたもち、山の神講に尾頭づきと白飯(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、もち、粉もの
◎米
 うぐぎ飯、まき、ほいどのにもつなど
◎麦
◎豆類
 大豆 利用のしくみ(ひたし豆、豆数の子など)、小豆 利用のしくみ(あんこ、赤飯)

三、季節素材の利用法
◎野菜
 くきたちのからしあえ、いかにんじんなど
◎野草、山菜、きのこ
 ふきのとう味噌、びゅうの酢味噌あえなど
◎川と海の魚貝類
 川からとれる魚貝類(がにたたき汁など)、購入する海の魚(にしん味噌など)
◎いなご、鶏、卵
 いなごの甘煮
◎果物、木の実

四、伝承される味覚
◎味噌
 ごどう味噌
◎醤油
◎たまり
◎漬物
 白菜漬、味噌漬、きゅうり・玉菜の浅漬など

五、福島北部盆地の食、自然、農業

■「福島南部の食」=山の幸を楽しみ、蚕を飼い、こんにゃくをつくる

一、四季の食生活
◎冬…いろりばたがだんらんと仕事の場
 麦飯に、あったかいおかず(日常の食生活)/いっそ飯、あかあかもちを(晴れ食、行事食)
◎春…こんにゃく植え、田植えの準備
 かっきりだんごが家族の好物(日常の食生活)/田植えには、赤飯、身欠きにしんの煮つけ(晴れ食、行事食)
◎夏…暑さのなかで、麦まとい、夏草刈り
 つぶし麦を入れたごはんに、しょっぱいおかず(日常の食生活)/大福もちをつくって農休み(晴れ食、行事食)
◎秋…稲まといに追われて冬ごもりの準備
 きのこや栗入りごはんで秋を(日常の食生活)/秋祭りは赤飯やいも煮しめ(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、こねもの、もち
◎米
 利用のしくみ、ごはんもの(麦飯、きのこ飯、味飯)、こねもののいろいろ(ねむった焼きもちなど)、もちのいろいろ(あかあかもちなど)
◎大麦、小麦〈利用のしくみ〉
 うどんの冷やだれかけ、かっきりだんごなど
◎大豆、小豆、その他の豆〈利用のしくみ〉
 油味噌、豆腐のでんがく焼き、羊かんなど
◎さつまいも、かんぷら
 干しいも、さつまもち
◎あわ、きみ、とうみぎ
 あわもち、きみもち

三、季節素材の利用法
◎野菜
 切干し大根の酢のもの、ささぎよごしなど
◎こんにゃく
 こんにゃくの煮しめ、こんにゃくの白あえ
◎山菜、きのこ
 たらぼうのつけ揚げ・じゅうねんあえなど
◎魚貝類と川魚
 身欠きにしんの煮つけ、どじょう汁など
◎肉、卵
 山鳥の吸いもの
◎おやつ、お茶菓子
 干し柿、干し柿の雪漬、大根の巻き漬

四、伝承される味覚
◎味噌
 玉味噌、すまし
◎漬物
 梅漬、味味噌

五、福島南部の食、自然、農業

■「阿武隈山地の食」=麦、雑穀を多彩に生かし、山の恵みで変化をつける

一、四季の食生活
◎冬…葉たばこの納付に追われる日々
 寒い夜は、そばのけんちん汁(日常の食生活)/元日の雑煮から男が炊事(晴れ食、行事食)
◎春…葉たばこの播種、桑の手入れ、田起こし
 盛りだくさんに春の香りを(日常の食生活)/女の祭りに三色菱もち、大田植えには重詰めのおふかし(晴れ食、行事食)
◎夏…麦秋がすむと葉たばこ乾燥に追われる
 にしん味噌、冷たいうどん(日常の食生活)/五目飯で先祖さまの供養(晴れ食、行事食)
◎秋…冬に備えて野菜の貯蔵と漬物づくり
 秋野菜たっぷりのだんご汁(日常の食生活)/新米でもちを搗く秋祭り(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、こねもの、もち
◎米
 利用のしくみ、ごはんのいろいろ(干しかぶ飯など)、米粉のこねもののいろいろ(笹巻きなど)、もちのいろいろ(さえもち、草もちなど)
◎大麦、小麦
 煮たて麦、麦こうせん、まぐわこなど
◎そば、あわ、きみ、とうみぎ
 そば練りもち、あわぶかし、塩がまなど
◎豆類
 ちりもち、ぶどう煮、三色てんぷらなど
◎いも類、かぼちゃ
 いもぼたもち、いもかん、さつましんこなど

三、季節素材の利用法
◎野菜、山菜
 利用のしくみ、野菜・山菜の保存法、野菜・山菜の料理(たらぼあえなど)
◎きのこ
 きのこ保存法、きのこの料理(おろしあえ、澄まし汁など)
◎海と川の魚貝類
 海の魚貝類の料理(塩引きの甘酒煮など)、川の魚貝類の料理(つぶの酢よごしなど)
◎おやつ、果物
 干し柿のてんぷら、柿皮の卵揚げなど

四、伝承される味覚
◎味噌、醤油、もろみ
 味噌、醤油、もろみ、床味噌
◎漬物
 菜っぱ漬、たいな漬、一升漬など
◎柿酢

五、阿武隈山地の食、自然、農業

■「石城海岸の食」=四季折々、生きのよい魚を「一夜食い」に

一、四季の食生活
◎冬…男は漁へ、女は麦の手入れや漬物を
 麦飯に、煮魚や焼き魚(日常の食生活)/白いまんまともちを出す(晴れ食、行事食)
◎春…カムチャッカまで三か月の遠洋漁業
 がぜ味噌、貝焼き、めぬき(日常の食生活)/祭りなどにはあんころもち(晴れ食、行事食)
◎夏…漁の獲物を楽しみに、女たちは畑仕事
 かつおをさまざまに料理(日常の食生活)/盆には、精進料理やごまだれうどん(晴れ食、行事食)
◎秋…さんま漁の合い間に男も稲刈り、脱穀
 脂ののったさんまを焼いて(日常の食生活)/えびす講には白いまんま、尾頭つき、煮しめの膳(晴れ食、行事食)

二、基本食の加工と料理
◎基本食の成り立ちと料理の手法
 ごはん、こねもの、もち
◎米
  利用のしくみ、ごはんもの(茶ぶかし)、米粉のこねもの(かしわもち、白だんご)、もち(豆もち)
◎大麦、小麦、雑穀
 蒸しパン、もろこしもちなど
◎大豆、小豆、その他の豆類
 八杯汁
◎いも類
 さつまごはん、三日とろろ

三、季節素材の利用法
◎魚
 利用のしくみ、魚の加工、魚の料理(さんまのぽうぽう焼きなど)
◎がぜ、貝類
 がぜの貝焼き、がぜ味噌
◎海草類
 ところてん、ひじきの白あえ

四、伝承される味覚
◎味噌
◎漬物
 たくあん漬、浅漬、梅漬

五、石城海岸の食、自然、農・漁業

■「相馬(原釜)の食」=干拓田の乏しい米を新鮮な魚貝で補う

一、四季の食生活
◎冬…冷たい海風に吹かれながら網を繕う
 海鳥汁や魚のあら汁で(日常の食生活)/尾頭つき、刺身、煮つけと魚をふんだんに(晴れ食、行事食)
◎春…干拓田での稲づくりがはじまる
 ほっきを煮つけやてんぷらに(日常の食生活)/節句に花もち、かしわもち(晴れ食、行事食)
◎夏…ほっき漁、田畑の手入れに追われる
 すずきやひらめがうまい(日常の食生活)/盆には、うーめん、もちのじんだあえ(晴れ食、行事食)
◎秋…忙しいまかにも収穫の喜び
 がに汁や大根の煮もの(日常の食生活)/収穫を祝い、もちを搗く(晴れ食、行事食)

二、季節素材の利用法
◎魚貝類、海草類
 利用のしくみ、魚貝類の料理(ほっきのカレーごはん、さつたろう煮、どぶ汁、たこいもなど)
◎海鳥
 海鳥汁
◎野菜、果物
 利用のしくみ、野菜・果物の料理(じゅうねん味噌など)

三、相馬(原釜)の食、自然、農・漁業

■人の一生と食べもの

一、凶作・飢饉のときの救荒食
二、薬効のある食べものと民間薬
三、人の一生と食べもの

■福島の食とその背景

一、日本のなかの福島
二、福島の自然と食
三、福島の地域区分とその指標
四、食を支える自然と農業
◎会津盆地の食、自然、農業
◎会津山間(只見)の食、自然、農業
◎福島北部盆地の食、自然、農業
◎福島南部の食、自然、農業
◎阿武隈山地の食、自然、農業
◎石城海岸の食、自然、農・漁業
◎相馬(原釜)の食、自然、農・漁業

■福島の食−資料

◎会津盆地の基本食とその食べ方、年間の食生活暦
◎会津山間(只見)の海産物、川魚、動物などの利用
◎福島北部盆地での基本食とその食べ方、季節素材の利用
◎福島南部の基本食とその食べ方、季節素材の利用
◎阿武隈山地での野菜、山菜、果実、きのこの利用
◎石城海岸の海産物の利用
◎相馬(原釜)の基本食とその食べ方

■索引
■付録
■調査・取材協力者一覧