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東北見聞録 3 歩く・会う・語る・住む
黒田四郎 著
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立ち読みコーナー
まえがき
 
 私は、一九九七年に最初の著書『東北見聞録』を刊行し、二〇〇一年にその続編『東北見聞録2』を出版している。本書はその三冊目である。

 しかし執筆の最中、何かしら心に引っ掛かるものがあった。それは私の本について、読者の皆さん方が何と思っていらっしゃるかということであった。

 私にはこれまでの人生において、お世話になった方々があり、それらの方々に私の本を謹呈した。それに対して多くの方々から、お礼と感想の手紙を頂戴した。これらの手紙にどのように対応したらよいのであろうか。最初の本の折には、何もしなかった。二冊目の出版の際には、それでよいのかと考えた末、一部の方々には返事を書いたが、大部分の方々にはお返事しきれなかった。そこで、この場をお借りして、いただいたお手紙に対する感想などを述べて、感謝の心をお伝えし、けじめをつけさせていただきたい。

 『東北見聞録2』では、社団法人東北経済連合会・明間輝行会長から、「刊行によせて」のユーモア溢れる名文を頂戴した。その中で、放浪型スキップ読書法、つまり、どこから読み始めてもよい、どこで読み終わってもよい、という読書法をサジェストしていただいた。この評判がとてもよく、ほとんど大部分の方々が、この読書法で読み、またこれから読みたいと言っておられた。

 私の高校時代の友達からは、八十歳で本を出すとは快挙だとあった。そういうことは考えてもいなかったが、言われてみると、そういう感じもしないではなかった。そこで調べてみた。私が本を出すにあたって心を惹かれた菅江真澄(すがえますみ)は七十六歳で、伊能忠敬(いのうただたか)は七十四歳で、そして司馬遼太郎は七十二歳で、この世を去っている。そう思った時、この第三集にとりかかるにも、気の怯む思いがあった。しかし長岡輝子さんは九十三歳で『老いてなおこころ、愉しく美しく』を出版され、斎藤茂太さんは八十四歳で『ひとりで苦笑、老いの実感』を、そしてまた最近では九十歳の日野原重明さんが『生き方上手』『人生百年 私の工夫』等々を相次いで出されていることを知り、勇気が湧いてきた。もっとも、このためには長生きをすることが前捷で、食事、散歩および健康情報には、大いに留意してきたつもりである。

 前著で私は、手紙で同窓の友人に「学兄」と書くように、戦友には「軍兄」と書いてみたいと述べた。これに対し、さっそく戦友から私に、「軍兄」として手紙が来た。嬉しかった。それで、それを契機として、その友人に「軍兄」として手紙を書き、ほかの戦友にも「軍兄」として、手紙を書いたりしてきた。

 そのほか、「東北の地誌、人物紹介のご功績は、電気事業と共に評価を受けて居られる」「よい仕事をなさいましたね」「読者の心豊かにする本ですね」など、過分のお褒めの言葉を頂戴して、大変恐縮した。また、東北が好きになったとか、東北に行ってみたくなったとか、東北が懐かしくなり、もう一度行ってみたくなったとか、さらには資料を送って来られて「何か書いてください」とのお手紙を頂戴したりした。これらは、望外の喜びというべきものであった。ただ、こうした中にあって、「とても難しい本だった」と言われた方があり、また、「難しかったので、辞書を引きながら読んだ」との感想を述べられた方もあった。これは、私の深く反省しなければならない点である。こうした皆さん方のご感想も念頭に置いて、東北の歴史、文化および風土をさらに調べ、この『東北見聞録 3』が完成した。

 私が本書で強調したのは、前著から一貫している。つまり、二十一世紀は、人類が自らの危機をひしひしと感ずる世紀であり、その危機とは、地球環境の悪化と精神の荒廃であるので、人類はみな力を尽くして、これらを防がなければならない、ということである。そのためには、心の豊かさと、それと表裏をなす自然を畏敬する「縄文の心」が、重要ではないか。こう考えたので、本書では「白神山地」「森は海の恋人」「白い森の構想」といったことを取り上げ、いたるところで自然の大切さを述べたつもりでいる。

 本書の多くは、東北経済産業局月報『東北21』に掲載されたものが、もととなっているが、執筆当時から三年余を経過したものもあり、多くの点について、筆を加えている。

 仙台に移り住んでもう二三年になるが、その間終始、東北電力にはお世話になってきた。さらに、東北経済連合会や東北産業活性化センター、電力ライフ・クリエイトにも、お世話になっている。この間、私は東北のことを勉強し、考え、東北のために仕事をする機会を与えられたことを、非常に感謝している。すでに亡くなられたが、私をこの地に招いてくださった若林彊・東北電力元社長、また、東北の一体化を強調された玉川敏雄・東北経済連合会元会長に、深く感謝の意を表したい。そして、日本はもちろんのこと、世界への情報発信に率先垂範され、これまでの二著に続いて今回も「刊行によせて」をご執筆くださった、明間輝行・東北経済連合会前会長、さらには、絶えず励ましのお言葉を頂戴している八島俊幸・東北経済連合会会長、私の本をいつも温かく見守り、PRしてくださっている幕田圭一・東北電力社長に対し、厚く感謝の意を表して、まえがきとしたい。