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東北見聞録 歩く・会う・語る・住む
黒田四郎 著
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手紙の効能

 もう大分前になるが、「年末状」という言葉を聞いたことがある。これは読んで字のごとく年末になると書く手紙のことで、ある方の命名によるものである。いうところのものは、年賀状は年末に書くものであるから、年賀状というのはおかしいのであって、年末状とすべきではないかということである。これも一理あることであろう。

 ところで今年も年賀状を書くシーズンとなり、私もその心の準備を始めたところであるが、私の場合今年は特別の意味がある。というのは、最近私は毎年一つずつ趣味を決めてきたが、今年の趣味は手紙を書くことだからである。そこで、どうして手紙を趣味とするようになったのか、それはとりもなおさず手紙の効能ということにもなるのであるが、それを述べてみたい。

 まず手紙とはどういうものであろうかと思って、辞書を引いてみると、「用事などを記して他人にやる文章」と書いてある。つまり手紙の効能の第一は、情報の伝達であろう。この際例えば年賀状について考えてみると、謹賀新年とか賀正とかが印刷されている場合、それで用を足していると思われるが、その印刷に加えて肉筆で添え書きとして近況を報告することは、手紙に趣を添え、親近感を増すことになるのではないかと思っている。

 それならば私の場合どうであったかというと、今年の私の趣味は手紙を書くことですとか、最近短歌を始めましたとか、あるいはインテリジェント・コスモスを担いでいますとか、書いた次第であるが、こうした添え書きは、元旦において爽やかさとか、心のぬくもりを交換できるものではなかろうか。

 手紙の効能の第二は、感動を伝達することではないか。今の世の中はなんとなく慌ただしく、味気ないものになっており、万事金で物事を判断する傾向になっているが、こうした世の中であるからこそ、私たちは心の暖まるものに接したいと思うようになっているのではないか。そしてそれに接すれば本当に嬉しく、一日中楽しく、ときには私たちの人生に飛躍を与えてくれることにもなるのではないか。

 第三は、ユーモア・ジョークで、手紙の中に笑いを折り込めないであろうか。笑いは私たちの心を明るくし、ストレスを解消してくれ、血のめぐりをよくしてくれるので、健康にもよいと聞いている。

 第四は、好奇心を充たしてくれる。手紙の相手の方とは、一般に職業も考え方も住んでいる場所も違うから、私たちにとっては、すべて新しい情報である。

 第五の効能は、若さを保ち老化防止になることである。手紙を書けば指先を動かし、頭を働かせることができるからである。

 手紙の効能は以上のようであるので、手紙を書くことを今年の趣味とした次第である。もうあますところ、今年もわずかであるが、これから年の瀬にかけて、せっせと年賀状を書き続け、手紙を趣味とした今年を終えたいと思っている。