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東北見聞録 歩く・会う・語る・住む
黒田四郎 著
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立ち読みコーナー
東北の人口

 東北地方の人口減少がいわれて久しい。しかし本当にそうであろうか。私は東北地方には「東北地方ダメ症候群」というようなものがあり、そのせいでこのようにいわれているのではないかと思い、新潟県を含む東北七県の人口増減について調べてみたが、その結果について述べてみたい。

 まず平成二年度の国勢調査の確定値を、昭和六十年国勢調査と対比してみると、この間における人口減少県は、青森、秋田、岩手、山形、および新潟の五県であるが、人口総数についてみれば、四〇四六人の増加となっている。

 この平成二年の国勢調査から約半年後の平成三年三月三十一日現在の自治省住民基本台帳によれば、人口減少五県のうち、新潟県は増加に転じており、人口総数は、前年同期に比べ九一〇〇人余の増加となっている。つまり、この期間においての人口は、増加している。

 このことから、今後東北の人口は増加し続けるであろうとすることは、早計のそしりを免れないであろう。しかし私には、東北の人口が今後増加をし続けるようになるであろうと思われてならない。というのは「金帰週末村民」といって、東京のサラリーマンが地方に家を購入して、金曜日には地方に帰って週末を村民として過ごし、月曜には東京に出勤するという現象が、東北に特に顕著に見られるようになり、また東京から東北に単身赴任してきた支店長さんらが、東北の住みよさに惹かれて家を求めて住みつき、転勤のときには逆に東京に単身赴任する傾向が強くなってきているからである。さらにいうならば、東北地方の各県が進めているUターン促進事業の効果が出てきているからである。

  そこでこれらの県のうち、最も早くからUターン促進事業に取り組んでいる秋田県について述べるならば、同県は昭和六十年の国勢調査において全国で唯一の人口減少県となり、その汚名を返上すべく、同年度からUターン技術者等確保対策事業を開始し、現在では秋田県のAをとってAターン事業とされている。その実績を見ると、昭和六十年の三十六名から始まって、平成二年には一四〇名となって、うなぎ登りに増加しており、しかも現在Aターン希望者は一三〇〇名もいる。これらのうち三十四歳以下の若者が一〇〇二名もおり、このことは自然増にも好影響を与えるものであり、また東京などへ引っ越そうとしている人たちにも、思いとどまらせる抑止効果もあると思われる。

 Uターン事業はこのようであるので、現在各県が推し進めているこの事業をさらに強化するならば、そしてまた対象を技術者だけでなく事務系、および農業にまで拡大するならば、東北の総人口はさらに増加を続けるであろう。そしてまた人口減少県も人口増加に転ずるであろう。私はこのように思うのであるが、その際大切なことは、Uターン就職者に対して職場はもちろんのこと、周辺の人々も暖かく迎えることであろう。